無垢フローリングを針葉樹と広葉樹という視点で考える
春先からウッドショックと言われる海外から建築用木材が入ってこないというニュースが目に付くようになりました。
原因はアメリカと中国のコロナウイルスによる影響で、
ワクチンの普及による景気回復やリモートワーク等の普及によって新築・リフォーム需要が増加したことなどが関係し、
日本が市場で買い負けているためです。
主にウッドショックは建築構造材として針葉樹がメインですが、ここではその針葉樹に加え広葉樹についても考えていきたいと思います。
針葉樹と広葉樹について
簡単に針葉樹とは
針葉樹は、杉や桧に代表される葉が細い木々を指します。
よく目にする松の葉は正に読んで字のごとく針の様に尖っているかと思います。
その多くは秋冬になっても葉が落ちることはなく、年中細い葉が茂っている木を指します。
幹が真っすぐ成長するため、その多くは建築用の構造材として利用されています。
戦後の建築需要を見越して、たくさんの杉桧が植林されましたが、海外から購入した方が安いということになり、
そのまま放置され現在に至ります。その分かり易い弊害が杉等による花粉症です。
また、日本には青森ヒバという大変香り高く、虫などを寄せ付けない防虫効果が高い、水にも大変強い希少価値のある針葉樹もあります。
簡単に広葉樹とは
広葉樹とは簡単に言えば、葉が広い木々を指します。
その多くは秋に紅葉し落葉しますが、中には年中葉が散らない常緑樹もあります。
建築業界での用途としてはほぼ内装材に限られています。
例えば、フローリングや腰壁、手摺などです。家具として、テーブルや椅子などにも使用されています。
大昔、縄文時代には大きな栗の木が柱などに構造体として使用されていました。
例えば、三内丸山遺跡などは良い事例です。かつては、栗の巨木もたくさんあった証拠です。
栗に関しては比較的最近まで構造材である土台にも使用されていました。
広葉樹には様々種類があり、国産では欅、楢、樺、タモ、栗、桜などがあります。
外国産には世界三大銘木と言われる、ブラックフォルナット、マホガニー、チークが有名です。
無垢フローリングについて
ここからは、建材の中でも最も重要とされるフローリングという視点から針葉樹と広葉樹について考えていきます。
なぜ、最も重要かと言えば、人が最も触れている部分が足の裏であることからです。
針葉樹のフローリング
メリット
針葉樹は成長が早いということもあり、木の内部に大量の空気を含んでいます。
そのため、温かみがあるということが最大のメリットです。
また、フローリングとしての用途では、
上記に記載した通り杉桧は国内に大量にあるため、北欧のパイン系を除けばその多くは国産材です。
国産ということは日本の産地にもよりますが、海外よりも圧倒的に近いため、
運搬に用するエネルギーが圧倒的に小さいと言え、地球環境にとってプラスになります。
今後国産の針葉樹はその用途や量が徐々に増えることでしょう。
デメリット
上記のメリットと表裏一体の関係になりますが、
空気を多く含んでいるために、内部に隙間が多く存在することになり、柔らかく傷が付きやすいということが挙げられます。
しかし、繊維を切っていない状態であれば、お湯を少し付けることで傷やへこみ部分が膨らみ元に戻ることもあります。
また、針葉樹の暖かいという点ですが、
残念ながら針葉樹・広葉樹に限らず後述しますが、塗装が行われていることが多く、
温かみを感じることができない場合が圧倒的に多い状態です。
残念な限りです。
他に、針葉樹は油分を多く含みますが、その油分が徐々に失われていくことで、ささくれが発生したりすることもあります。
それらの予防のため、汚れ防止の意味でも自然塗料などを定期的に塗る必要があります。
広葉樹のフローリング
メリット
広葉樹は針葉樹に比べ一般的に固い性質があり、傷がつきにくい傾向があります。
色も樹種により様々で、風合いや色合いの違いを楽しむことができ、汚れも目立ちにくいということが挙げられます。
広葉樹のフローリングの多くは海外からの輸入です。
国産はあまり出回っていないことや、価格もかなり高価なため大半が海外産です。
デメリット
木目が積んでいることで固い性質があり、針葉樹のフローリングに比べ冬場に冷たさを感じやすい点があります。
しかし、現在主流のフローリングは木の表面に塗膜の伴う塗装が行われているため、
その塗膜により実際には木に触れていことになります。
そのため、塗膜の伴うフローリングの方が冷たさを圧倒的に感じやすいと言えます。
正確には冷たさを感じやすいというか、冬場はかなり冷たく感じます。
理由としてはその塗膜の熱伝導率が高く、足の裏から体温を奪ってしまうためです。
塗膜を行ったものより、広葉樹は圧倒的に温もりを感じることができます。
まとめ
ここまで記載したことを踏まえると、広葉樹と針葉樹にそれぞれメリットデメリットがあることが分かります。
選ぶポイントとして、コストパフォーマンスを重視するならば針葉樹になります。
樹種にもよりますが、参考として針葉樹の場合は広葉樹の半分から1/3程度の価格になると思います。
メンテナンス性を重視すると広葉樹になります。
それは木目が固いため傷が付きにくいことや、色合いがあるため汚れが目立ちにくい理由からです。
今後、海外から広葉樹のフローリングも資源枯渇という理由から徐々に入りにくくなってくるものと予想され、
そのため将来的には国産である針葉樹のフローリングが主流となってくるものと思われます。
それまでにはかなりの時間の流れがあると思いますが、
徐々に針葉樹への慣れや付き合い方への理解が必要になってくると思われます。
現在、針葉樹を圧縮することで固くする技術もあるようで、広葉樹のような特性に近づける目的と思われます。
しかし、考えなければいけないことは、針葉樹に広葉樹の特徴を要求するという発想があるべき形なのかということです。
それより大事なことは、針葉樹の特徴を尊重し、その扱いを楽しむという発想ではないでしょうか。
時代の経過とともに人間の成熟度も上がり、物事への接し方も、そういった捉え方が為されることを願ってやみません。